シリーズ「消費構造の変化と進化するマーケティング」
(3)実店舗とネット通販の攻防と趨勢待
マーケットの上位顧客をターゲットにしてきた百貨店の縮小が止まらない。2018年6月末には売り場面積が555万平方メートルで、10年前と比べて2割減る見通しだ。地域では閉店が相次ぎ、フロアを専門店に貸し出すケースも増えている。
日本百貨店協会の統計で見ると、2017年は、三越千葉店、堺北花田阪急等6店が閉鎖、2018年は6月までに、西武船橋店、伊勢丹松戸店、丸栄(名古屋)等6店が閉店の予定であり、2017、2018年ともに新店はゼロである。
人口減少に加え消費構造の変化で、これまでは店舗に来店し恭しく接客されて、買物レジャーを楽しんでいた顧客までが、ネットの利便性に目覚め始め、ネット通販との競争で苦戦を強いられている。直近の17年度は、株高効果で高額品、宝飾品が売れ、インバウンド客の増加で化粧品等が好調だったが、足元の販売額が何時まで堅持できるかは不透明である。
一方、日常消費の代表である地域スーパーの苦境も顕著になってきている。
2017年12月7日、スーパーやまと(山梨県・韮崎市)が破産申請し、県内9店舗、180人を解雇した。2017年は、各地の中堅スーパーの廃業、倒産が目立った。1月スーパー「朝日ストア」(長崎県)、4月ユーマート(高知県)、5月食品スーパーオーケー(大分県)、8月さかいりショッパーズ(栃木県)、オーガニックスーパー「マザーズ」(神奈川県)、12月スーパーいづみや(茨城県)などが閉店した。この他にも、ファミリーマートとドンキホーテの資本提携や三越伊勢丹フードサービスがスーパーマーケット事業をファンド会社に譲渡する等苦戦している。
高齢者にもネット通販の波が浸透しつつある。これまで地域高齢者の頼りとされてきた都市部の中堅スーパーの実情を見ると、日中の客は専業主婦が減って、仕事を持った主婦は夕方の遅い時間に買い物に訪れ、昼間は高齢の男性客が来店するが売上には繋がらない。
平成29年度の情報通信白書では、13~59歳の9割、60~64歳の8割がネット販売を利用しているというデータが報告されている。2017年度末で利用世帯は37%超で今後も急速に伸びると予測されている。現在の高齢者は現役でパソコンを使ってきた世代になり、インターネットにも抵抗感がない。だからスーパーに来ていた客が、急にネット販売を利用し始める可能性は高いのだ。さらに足腰の弱くなった高齢世代を取り込んで、生協の個人向け宅配事業の「個配」が、1兆2,268億円(103.3%)と堅調な伸びを示している。
モノを買うことについて、女性を中心とする消費者の志向に大きな変化が見られる。それは買い物がレジャーでなくなったということだ。かつてデパート、商店街、スーパーへの買物は、女性にとって日常のレジャーだった。そこでの「何でも揃う」「種類が豊富」「価格が安い」という強みは、すでにネット通販に奪われているのだ。
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