シリーズ「消費構造の変化と進化するマーケティング」
(4)小売市場の勝ち組コンビニに迫る危機
コンビニエンスストアが飽和の時代に突入している。2017年度末でおよそ5万7千店に達し、既存店舗の客数の減少が続いている。新店舗の開発で売上高は、わずかに伸びを保っているものの、既存店と新規店舗で顧客争奪も想定されそうな構図になって来ている。
小売市場の勝ち組としてシェア拡大を続けてきたコンビニの成長が鈍化し、代わってドラッグストアやインターネット通販が売上を伸ばしている。日本フランチャイズチェーン協会によれば、大手7社の2月の既存店客数は前年同月比1.4%減となり、24か月連続で前年を下回ったという。大手3社のセブンーイレブン、ローソン、ファミリーマートもすべて8か月~11か月連続で前年割れとなった。
人手不足に伴い最低賃金の上昇が続き、募集時の時給は1,000円に上がった。オーナー経営方式のコンビニは人件費等の運営コストが嵩む中、売上の伸び悩みが続くと、廃業に追い込まれるケースも出てくる。東京商工リサーチによると、2017年のコンビニの倒産・休廃業・解散の合計は初めて200件を突破した。そうした情報が拡散すれば、新規出店のオーナー希望者も減りコンビニの成長モデル自体が危うくなる。
日本経済新聞によればコンビニの2017年度の市場規模は、10兆6975億円で前年比1.8%増だがここ数年鈍化している。一方、ドラッグストアの2017年度の市場規模は、前年度比5.5%増の6兆8504億円と追い上げており、生鮮食品の扱い量を増やしたり、24時間営業の店舗数を増加する等してコンビニと競合している。更なる脅威はネット通販だ。楽天、ヤフー、アマゾンジャパンの国内ネット通販大手3社の2017年の販売総額は、約6兆7000億円になり、前年度比13%増だと報じている。
コンビニがスタートして40年、地域の小売店鋪を駆逐して成長してきた国内市場は飽和状態に近づいている。こうした状況を踏まえてマーケティング戦略の大転換が模索されている。
一つ目の方向はAIの進歩によるコンビニ無人化の流れだと言える。2016年12月にAmazon本社内でノンオペレーションのコンビニ「Amazon Go」がオープンした。これまでのコンビニとは違い店員が存在しない。客は手に取って店から出るだけで購入が完了してしまう次世代型のコンビニだ。中国でも2016年8月に広東省・中山市で創業した「BingoBox」、また2017年7月には北京で「EAT BOX」という無人コンビニが開店したと報じられている。「Alipay」や「WeChat Pay」等の現金を持たないスマホ決済が急速に普及している中国では、盗難やトラブルもほぼなくオペレーションされている実績から一気に拡大する気配だ。
日本でもセルフレジという形で、商品のスキャンから会計までを客が行う方式がスーパーマーケット等で始まっている。経済産業省は2017年4月に「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表し、ローソンとパナソニックの無人会計の実証実験を支援する等、ノンオペレーションを後押ししている。
ただ日本のコンビニは、ファミリーマートが2017年6月に公開した次世代型店舗「ファミマミライ」のコンセプトムービーでは、商品の会計やおすすめ商品の紹介は自動化しても、多様なサービス機能を果たすオペレーターは登場して、完全無人化は今のところ意図していないようだ。
次世代店舗の中に店員を配置するか、しないかの分岐点の先に、省力化した費用や人材でどんな付加価値が付けられるかが、競争に勝つための焦点となるだろう。先頃のNHK・クローズアップ現代(2018.2.27放送)で、コンビニ飽和時代の課題を取り上げ、一部レジの無人化で浮いた人材を、魅力ある商品の開発に振り向ける現場の取り組みを報じていた。そのキーワードは“出来立て商品の開発”である。思い立ったらすぐ買えるコンビニの利点を生かして、出来立ての付加価値を売る。「コンビニコーヒー」に続く出来立て商品は、どんなものになるのか、コンビニの再興に資するものになるのだろうか。
二つ目の方向は、ターゲット層の転換に向けた取り組みだ。そのキーワードは、「高齢者」、「過疎地」だ。これらについては紙面も尽きたので次回の稿で触れることにしたい。
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